vs 1本お化け
ようやく喫煙欲求も落ち着いてきた時分に、突如現れる「1本くらい良いじゃないか?」という誘惑は、禁煙者の間で「1本お化け」と称され親しまれている存在だ。何せこうした突発的な欲求とは、今後数年間、もしかしたら一生付き合っていく必要があるのかもしれないのだから、何とかうまく付き合うのが賢明だ。禁煙して5年になってようやくこうした欲求が出てこなくなったとの話も聞いたことがあるが、過去にフィリピンで3か月間ルームシェアしていた私の知人は、禁煙して10年経っていたにも関わらず、毎日私が吸うタバコに誘惑されて遂に喫煙を再開してしまった。
寿司でも焼肉でも何でもよいのだが、とても好きな食べ物を1つ思い描いてほしい。何らかの原因でその食べ物が食べられなくなったとして、その食べ物を食べたいという気持ちが収まることはあっても、果たしてその気持ちが消えることはあるのだろうか?何かの折にその食べ物を目にしたら、きっと食べたくなるだろう。タバコも同じだ、タバコを吸いたいという気持ちは一生消えることがないのかもしれない。ここではこうした「1本お化け」との戦い方を紹介する。
振り出しに逆戻り??
私が最も効果的と感じたのは、1本でも吸ってしまえばゼロから再スタートであることを思い出すことだ。せっかくニコチンを体内から排出し、吸い癖を克服してきたにも関わらず、喫煙を再開したら全部最初からだ。またあの辛い最初の3日間を過ごすのか?またストレスを溜めながら1週間耐え抜くのか?と自問すれば、きっと誘惑に打ち勝つことができる。それくらい禁煙の最初はしんどいものだ。
但し、絶対に1本で辞められるという強い自信を持ってしまうと、喫煙再開のリスクを考えることはあまり効果的ではないかもしれない。そうした時には、本当に自分がそんなに強い人間かを自問しよう。禁煙の失敗経験がなかったとしても、これまでタバコの快楽に甘えて、禁煙できずにきた存在ではないか。そんな易きに流れやすい存在が、果たして1本吸って、もう1本と手を伸ばさない自信を持って良いのだろうか?確かに、月に1本だけ吸うとか、本当に1本吸って継続しないという変わった人の話は聞くこともある。でも本当に1本吸って辞めるのであれば、リスクを侵してまでその1本を吸う意味があるか聞きたい。
絶対にまずい!
私は「1本お化け」との戦いに負けたことがない。なので、久しぶりに吸うタバコの味を知らない。でも、「絶対にまずい」ことだけは確信を持っている。そもそも、風邪を引いて1日吸わなかっただけでも、再開の1本はまずい。アイコスに慣れて紙巻タバコを久しぶりに吸ったときもまずかった。何よりも生まれて初めて吸ったタバコはありえないくらいまずかったではないか。結局、タバコは味や煙に慣れて、身体がニコチンを欲しがるようになって美味しく感じられるのであって、ニコチンも欲していない禁煙に慣れた身体にとって、久しぶりの1本が美味いわけがないのだ。
こう思うと、吸ってみようかな?という気持ちが起こっても何だか萎えてくる。私の場合はタバコを吸いたいというよりも、「久しぶりに吸ったら、どんな味がするかな?」という好奇心が恐ろしかった。でも、まずいことに確信を持っていれば、わざわざ吸って確かめる必要もない。自分の意志の弱さを再認識させるようなタブーを侵してまで吸ったのに、全然美味しくないなんて最低のオチだ。1本お化けに襲われたときは、是非人生で初めてのタバコの味を思い出してもらいたい。
「3」に気を付けろ!
最後に、特に1本お化けに注意するポイントを紹介する。危険ポイントを事前に認識しておいて、備えを持って臨むようにしてほしい。
まず、禁煙は「3」に気を付けろ!とよく言われる。つまり、3時間、3日、3週間というように、3が付く区切りの時間が危ないということだ。3時間は1本お化け以前の話だが、3日と3週間は本当に要注意だ。まず、3日は喫煙欲求のピークを乗り越えて心に油断が生まれやすい。丸2日も吸わなかったんだから、1本くらい吸ってまた辞めれば良いだろうという気持ちだ。便宜的に3日となっているが、4~5日目くらいも同様に喫煙欲求への耐性が弱くなっているので注意だ。
次の3週間はちょっと毛色が違う。というのも3週間も経つとほとんど強い喫煙欲求は起こらないのだが、「久しぶりに試しに1本吸ってみようかな?」とか、「この程度で禁煙できるなら、再開してもすぐに辞められるだろう」とか、そういう気持ちが芽生えてくるのだ。喫煙欲求に負けて吸うというよりも、自分の方から少し歩み寄ってしまっているような感じだ。当然のことながら、こうした気持ちに負けて吸ってしまった人は、禁煙者とはいえず、禁煙失敗者なので気を付けよう。
3週間を超えてしまえば、もう大きな波が来ることは少ないだろう。あとは気を付けなければならないのは喫煙者との飲みの席だ。私は禁煙当初はむしろ絶対吸わないという思いが強かったので、あまり隣で喫煙されても気にならなかった。しかし、2週間とか3週間とかある程度禁煙して時間が経ってくると、そうした気持ちも弱まってきており、ふいに猛烈に煙に誘われて吸いたくなる時があった。なお悪いことに、こうした時には「1本ちょうだい」と言えば、すぐにタバコが手に入ってしまう状態でもあるのだ。私もそうだったが、大抵の喫煙者は少しでも喫煙仲間が増えて欲しいと思っている。あなたが望めば喜んで1本くれるだろう。
最後は自分との対話
いろいろなことを述べてきたが、最後はやはり自分と向き合うことが一番の対策だ。どんなシチュエーション、どんなモチベーションであっても、1本お化けへの最後の武器は「なぜ禁煙したかを思い出すこと」だと思う。このブログをここまで読んでくれている人は、きっと自分と向き合い、禁煙の理由をある程度明確にしてきているはずだ。結局、こういうところでそうした確固たる気持ちが活きる。自分と向き合うステップまで進めず、勢いで一気に吸ってしまうことだけに注意しておけば、本来は問題ないはずだ。