タバコとの出会い
タバコを吸う理由は千差万別だ。だから、とりあえずサンプルとして私の話を聞いてほしい。私が小さいころは私の父もタバコを吸っていた(後に禁煙)。また、ヤンキーだらけの田舎の中学校で生活していたので、男子生徒の4分の1くらいはタバコを吸っていたような環境で育った。4分の1というのは誇張でもなく、中学校の野球部は非喫煙者が一人だけだったのを覚えている。そのため、小さいころからタバコは身近だった。それでも何となく親から貰った小遣いでタバコを買うことに抵抗があったこともあり、私は特にタバコを吸いたいとも思わないまま、思春期を終えた。
初めてタバコを吸ったのは、大学時代だ。当時、私は退屈過ぎる大学生活に嫌気が差して、海外を放浪するバックパッカーにハマっていた。そのため、初めて吸ったのはタバコでは無かった。何度か海外と往復するにつれ、何となく日本でも口寂しいという感覚に襲われるようになり、手に取ったのがタバコだった。初めはホープのスーパーライト、2006年ごろで10本140円か150円だったと記憶している。当時はコンビニでバイトしていたこともあり、バイト仲間といろんなタバコを試してみた。そのときに吸ったアメリカンスピリットの美味しさに感動して、以後10年間くらいアメスピライトを吸い続けることになる。当時は今みたいに流通していなかったので、バイトしていたコンビニにわざわざ仕入れてもらい、仕入れた分は全部私とバイト仲間で買っていたように思う。吸っていた本数は当時から禁煙前まであまり変わらず3日で2箱くらいだ。
アメスピなんか吸ってるような奴だから、タバコを格好良いと思っていたのに疑いの余地はない。特に世の中に禁煙志向的な空気が流れ始めていたころだったので、そんな雰囲気に抗うことにちょっと優越感を感じたりもしていた。また、バックパッカーをしていたので、旅先でもタバコは必需品だった。咥えタバコでアジアの街中を歩きまわるのは何とも絵になる。大自然の絶景の中で吸うタバコはめちゃくちゃ美味いし、やっぱり絵になる。一部のアジアの国では、タダみたいに安いタバコもあり、大学を休学して1年間海外に居たときなどは1日2~3箱吸っていた時期もあったと思う。
心境の変化
このようにタバコを格好良いと思って吸い続けてきた私だが、いつしか吸う理由が格好良さではなく、習慣に代わってしまっていたようだった。こうした現実を突きつけられたのが、2017年4月のアイコスへの転換だ。当時品薄だったアイコスをたまたま友達が見つけてくれたので、私は嬉々として乗り換えた。銘柄はバランスドレギュラーだ。とにかく灰が出ないこと、家が火事になる心配がないこと、そして周りに煙で迷惑をかけることが減ることを喜んだ。そんな折、昔の友人(喫煙者)と再会し、「アイコスなんて吸ってダサ過ぎ」と酷評された。「そんなものに頼ってまで吸いたいか?」という友人の気持ちは何となく伝わったし、妙に納得したのを覚えている。
そう、アイコスを吸っている姿は格好良くないのだ。「格好良くないのに何故タバコを吸っているんだろうか?」私はこの頃からアイコスを必死に咥える自分が、何となくニコチンに支配されているような気がしてきて、「なんだか嫌だなぁ」という気持ちを持つようになった。それでも、タバコを辞めようなんて発想は一切なかった。
体調の変化
タバコを吸い始めた時の私は非常に若かった。その後、タバコをどんどん吸うようになったときもそうだ。朝まで飲んで、クラブに行って、一晩で2箱くらいタバコがなくなることもざらにあった。一方で、30歳を過ぎたくらいから、何となくお酒を飲んだ翌日にだるさが残るようになってきた。体調も良くない。最初はお酒の飲み過ぎかと思ったのだが、こうしたことが続くうちにあることに気付いた。「だるさの原因は肺の違和感ではないだろうか?」と。実際、飲んだ翌日は肺がムカムカするというか気持ち悪いのである。「これは原因はタバコでは無いだろうか?」と思うようになった。
また、何故か30過ぎてからお酒に酔って吐くことも増えた。最初は酒に弱くなったなんて思っていたのだが、「頭がくらくらして気持ち悪いってアルコールもそうだけど、ニコチンのせいではないか?」と思うようになった。とにかく、簡単に言えば年齢のせいかタバコを吸い過ぎた影響が直接身体に出てくるようになったのである。さらに言うと、2017年からはランニングを始めており、タイムを伸ばすためにはタバコを辞めて、心肺機能を回復させないとなんて思い始めてもいた。そう、ここに来てタバコを辞めるという選択肢がチラつき始めていたのだ。
結局なんでタバコを吸っていたの?
以上の内容を整理すると、結局私がタバコを吸っていた理由は以下だったと思う。
・ 格好良いから
・ ニコチン中毒だから
・ 口寂しいから(吸い癖が付いてしまったから)
格好良さを求めていた時は良かったのだが、その他の理由がどんどんタバコを吸う目的と化してきていて、格好良さを求めていたはずが全然格好良くなくなってきてしまっていたのだと思う。まして、今は時代も変わっている。昔ほどタバコを吸うこと自体に格好良さを感じなくなってきている。これは時代のせいではなく、私の年齢のせいかもしれないが。
そして、もう一つ重要な理由がある。それは、禁煙至上主義のようになっている世の中に対する反抗である。たとえタバコを辞めたいという気持ちがチラついたとしても、世間の圧力に負けて禁煙したと思われるのは、非常に癪だったのだ。もう意地になってタバコを吸っていたという部分もあったのかもしれない。
こうした私のタバコを吸う理由に異論がある方はいるだろうか?実を言うと、みんな大体こんな理由なのではないかと思っている。何故ならタバコは最初はまずい。だから格好良くなろうとかそういう気持ちがあって、必死に慣れようとしない限り、ニコチン中毒になるまで吸わないからだ。もし格好良いことが理由で吸っているのだとしたら、もう一度、今現在タバコを吸っている自分を見つめ直してみて欲しい。そして、格好良いかどうかを考えてみて欲しい。私は格好良い瞬間ももちろんあると思う。でも、タバコに支配されているのだとしたら、それは格好悪いと思う。
私はこれを認識したのがアイコスにした時だった。思えば、アイコスに変えようとしたこと自体、禁煙に興味が湧いていたのかもしれないと今になって思う。これに身体の不調が合わさって、後に禁煙への興味が深まっていくことになった。